朝5時半
一般的にはまだ寝てる人もいる時間に士郎は目を覚ます。
そして鍛錬のためいつものトレーニングジャージに着替えた後、家から出て走り出す。
行き先は新都の教会で、着いたらすぐ家に引き返す。
1時間かかって士郎は家から教会までを往復する。普通の人でもこんなに早く帰ってはこれまい。
そして家に戻ったら、今度は腕立て伏せ、腹筋、背筋をそれぞれ100回ずつ。
これを士郎は毎日続けていた。
鍛錬が終わった後は着替えてシャワーを浴び、朝食の準備である。
今日は3人分なので少々時間がかかったが特に問題もなく終わった。
朝食が出来てから士郎は機能から滞在することになった二人を起こしに行った。









まず橙子の部屋に行くと、布団は荒れておらず、本人は眼鏡を外して静かに寝ていた。
「橙子姉さん、起きてください。朝食が出来ました。」
そう呼びかけながら方を揺らす。
「うぅ〜、士郎君?」
起きてすぐ眼鏡をかけた橙子の口調が昨日と違うことに若干驚きつつ士郎はそれに答えた。
「はい。橙子姉さん朝ご飯出来ましたよ。」
「そう、分かりましたすぐ行きます。」
そう言って体を起こした橙子は自身の名前と同じオレンジ色のパジャマを着ていた。
「じゃあ、青子姉さんを起こしに行ってきます。」
そう言って青子の部屋に向かう士郎。
こちらは橙子と違って体は布団からはみ出し、着ていた物も昨日と同じシャツにジーパンであった。
「青子姉さん、起きてください。朝食が出来ました。」
橙子と同じく、呼びかけながら方を揺らす。しかし、
「うぅ〜、名前で呼ぶなぁ〜!」
そう言って起きあがった途端、士郎に思いっきり拳を放ち、吹っ飛ばす。
「あぁ〜、ごめんね士郎。」
そう言って謝るが後の祭りである。
しかし、
「うぅ〜、しっかりしてください、青子姉さん。朝ご飯が出来たので居間に来てください。」
頭を押さえながら、起きあがってそう伝え部屋を出て行く。








二人が席に着いてから士郎は疑問を口にした。
「青子姉さん、まさかとは思いますがその服昨日のままじゃありませんよね?」
そう言われた青子の格好のは昨日と朝見たのと同じシャツにジーパンであった。
「おまえなぁ。」
そう言う橙子も昨日と同じワイシャツにズボンだがこちらは洗濯した物だと分かる。
「む?何よ、失礼ね。私は同じ服をいくつか持ってるのよ。」
「そうですか。それと洗濯物は洗面所の洗濯機の中にいれといてください。後で洗濯するので。」
「それはありがたい。」
「よろしくねぇ。」
そんな会話で1日が始まった。








朝食から1時間後3人は昨日の話の続きを始めていた。
「さて、早速始めたいところだが後2,3日待ってほしい。」
「どうして姉貴?何か問題が?」
「ああ、魔力殺しを作りたいんだ。遠坂に気付かれるとまずいんでな。」
「そうね、確かにまずいわねぇ。」
「あの、魔力殺しってなんですか?」
二人の会話に士郎が混ざる。
「魔術師はまず魔力回路っていうのを生成するんだけど、そうすると魔力が体から漏れて他の魔術に気付かれてしまうの。だからそれを分からなくするための物が魔力殺し。
姉貴はそういった物を作るのがとてもうまいのよ。」
「それってどういうかたちをしているんですか?」
「大抵の物ならどんな形でも作ることは出来る。そもそも所持していないと意味がないから身につけていてもおかしくない物を作らなければならないからな。」
「じゃあ帯みたいので出来ますか?出来れば色は赤で。」
「出来ることはないが。どうするつもりだ。」
「出来れば目隠しとして身につけておきたいんです。」
「まぁいいだろう。早速取りかかる。それと青子こいつの体を鍛えておけ。それと魔術についても一通り知識を身につけさせておけよ。」
「分かったは。じゃあ士郎こっちに来なさい。」








3日後
「出来たぞ。」
「ありがとうございます。」
すぐそれを目に巻いていく士郎。ちなみこの三日間士郎は包帯をはずしていた。二人に言われて出来る限り他人の顔を見ておくためだ。
「さて、では今度こそ魔術の修行に入ろう。」
そう言って橙子は液体の入った試験管を渡す。
「これは?」
「魔術回路を生成する物だ。ただしそれを飲んだら後には退けんぞ。」
「覚悟は出来ています。」
そう言って液体を呷る。
その瞬間士郎の中であの映像がふたたびフラッシュバックする。
「ぐっ、がああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「「士郎!?しっかりしろ!」」
青子と橙子は予想外の事態に焦った。
魔術回路を生成するとき死ぬような苦しみを味わうことは分かっていたがこうなるとは思わなかったからだ。
そしてそんなことを考えている間にも士郎の叫び声が響く。
「、、、、、、ああああああ、やめて、、、、食べないで、、、、、、、、、、食べたくない、、、、、殺されたくない、、、、、、、、、、殺したくない、、、、、、、、、、、、、、」
そう言って士郎は事切れたかのように崩れ落ちた。
二人はすぐさま抱きかかえたが命に別状はないようだった。









1時間後
二人はずっと黙ったままだった。
士郎が最後に叫んだことが気になっていたからだ。
先に口を開いたのは青子だった。
「姉貴、あれってやっぱり、、、、。」
「ああ、おそらく士郎が体験した地獄が魔術回路を生成すると共にフラッシュバックしたのだろう。」
「でもどうして?」
「推測でしかないが聞くか?」
「是非。」
「ふむ、原因は士郎が『生きた魔法』になったためだと思われる。」
「はい?」
「士郎は生き返るために肉体がそのまま『魔法』になった。その課程で『根源』に達したのだろう。そしてそれと同時にあれをみた。
そして同じく魔術の最終目標は根源に達することだ。そのためにはまず魔術回路を生成する必要がある。つまり魔術回路を生成することも根源に達する課程の一つともいえるわけだ。
方法は違うがどちらも根源に達する課程を通り過ぎたことになる。つまり同じ道を歩いていくのと、自転車で行くのと、方法は違うが同じ道を通ることに代わりはない。
このためフラッシュバックが起こったのだろう。」
「なるほどね。それにしても士郎に魔術回路は出来たのかしらね?こんだけ大変なおもいをしたのに。」
「さあな、今の士郎に下手なことをしても巻き込まれるだけかもしれんしな。生きてるだけましだろう。」
そう二人は結論をつけ、士郎の無事を祈った。








翌日 午前10時
二人は朝から士郎の魔術について話し合っていた。
何せ生きた魔法なのだ。
どんな魔術、いや魔法さえ使えるのか二人には予想もつかない。
しかしある程度対策を考えておかねばならない。
それも士郎に魔術回路が生成されていればの話だが。
そうして話している内に戸が開き士郎が居間に入ってきた。
これには二人は心底驚いた。
士郎はただでさえ普通の魔術師と状況が異なるのだ。
しかもたった1日で歩けるようになるまで回復したのだ。
士郎の顔は青く、見た目的には初日と同じだが、状況が違った。
「おい!大丈夫か?」
「ええ、何とか。一応一度体験したことですし体にも問題はありません。」
しかし二人には士郎がやせ我慢をしているようにしか見えなかった。
「、、、そうか。こっちに来い。魔術回路が生成されたかみてやる。」
「一応私もみておこうかしら。」
そう言って士郎の体に触れる橙子と青子。
そしてその結果に二人は驚き、落胆する。
「最悪だ、、、」
「最悪ね、、、」
「あの〜もしかして回路が生成されてないとか?」
いや、そう言って首を振る二人。
しかし二人とも士郎を信じられないかのような目つきで見る。
「回路が生成されていた。しかし問題はその数だ。数えたらきりがない。一介の死徒の比ではない。もしかしたら27真祖並かもしれん。」
「これはもう私たちの手に負えるレベルを超えているわね。」
「えっ!?」
話の内容ではなく青子が漏らしたことから二人が自分の側からいなくなるのではないかという不安に駆られる士郎。
「安心しろ、おまえの面倒はちゃんと見る。だが、、、、」
「『魔導元帥』でさえ士郎のことを把握できるか心配ね。」
「そうだな。本当はもっとゆっくりしたかったが仕方ない。おい、士郎出来るだけ早くヨーロッパに行くぞ。」
「えっと、結局魔術回路は生成されていたんですよね?」
「まぁ、今度はそれの所為で新たな問題が発生したがな。」
「でも、これで魔法使いになれるんですね?」
「まあな。」
「良かった。」
何故二人があわてているのかは青子が魔術回路について教えてくれていたから分かっていた。
ただそんなことより士郎は切嗣と同じ魔法使いになれるかの方が重要であった。
「ところで士郎、パスポートは持っているか?」
「えっとパスポートってなんですか?」
実は士郎は社会についてほとんど何も知らない。
基本的に外出は毎朝と毎晩の鍛錬で走ること以外はなく、学校にも行ってないからだ。
食材などは基本的に配達届けられていたので、冬木市に住んでいる者でも士郎のことを知るものは少ない。
「おい、士郎にパスポートが出来るまでの間に社会一般常識を教えてやってくれ。」
「そうねこういう事は私向きだし。」
封印指定のため基本的に他人と関わることが少ない橙子に比べ、堂々と行動できる青子の方が社会の事柄について詳しいので、この役回りは必然である。
「私は士郎の『お爺ちゃん』とやらと話してくるよ。パスポートの申請もな。おい士郎、電話番号を教えろ。」








2週間後
士郎のお爺ちゃんこと、藤村雷画に関しては特に滞りはなかった。
事前に二人のことを知っていたのと士郎からの頼みを(無論魔術の部分を隠して)話すとすんなり許可が下りた。
ただし士郎についてはある程度のことを知っていたようでその部分についてはかなり念を押されたが。
無事パスポートを得ることができ、荷造りも終わり明日ヨーロッパに発つ前夜。
青子は橙子に話があると言われた。
「で、何?」
「士郎の体についてなんだが。」
「まだ何か問題があったの?」
「いやこれは魔術に関係することではなく、純粋に一般的な意味での士郎の体についてだ。」
「ふ〜ん、で士郎の体が何?」
「まず最初に、おまえは士郎を初めて見たとき士郎が男か女かどっちか分かったか?」
「それって何か意味あるの?」
「いいから答えろ。ちゃんと意味はある。」
「そうねぇ、思い返してみれば確かにわかんなかったわねぇ。」
「そうだろう。私もそうだった。それで士郎の体をのぞいて分かったんだが奴は『中性』だ。」
「は?何?『中性』?」
「ああ、他に表す言葉無いのでこう言っているがな。確かに士郎は男だ、そして性格もな。しかし1年前の事故でどうやら体のホルモンバランスが狂ったらしい。
そのためか肉体は元が男だったがそれでも男と女の狭間のような体をしている。だから『中性』だ。
それに体の色素がだんだん減っている。肌の色が薄く、髪が話を聞く限り元の色より薄くなっているのもおそらくその所為だろう。」
「なるほどね、だから『中性』か。」
「それともう一つ。士郎は身体能力が他の奴より異常に高い。これはおまえの方がよく分かっているだろ。」
「ええ、私が言ったことを難なくこなすんだもの驚いたわ。」
橙子が魔力殺しを作っている間士郎の体を青子が鍛えていたのだが、士郎は十分すぎるほどの身体能力を有していた。
「どうしてかはそちらはわからん。1年間鍛えていたと言っても所詮子供だからな。更に身体能力だけでなく、五感の方も鋭い。
これは一年間目隠しをして生活をして得た代物だろう。ただその目でさえ話にならないほどだからな。」
「何?目になんかあったの?」
「考えてみろ。士郎が目隠しをしていた理由を。あいつは他人の顔を見たくなかったんだ、切嗣さんでさえな。
つまりこの一年間目をほとんど行使しなかったと言うことだ。普通に考えれば光を認識した時点でとても物を見ることなんかかなわないはずなんだが。
それにあいつの目は紅い。通常そんなことはありえんのだが。おまえは何故日本人はあまりサングラスをかけないのに、アメリカ人がサングラスをかけるか分かるか?」
「あいつらの方が私たちより多くの光を見られないからでしょ。」
「そのとおりだ。私たちの瞳は黒だが、あいつらは青い。全身の色素が私たちより薄いのが原因だがな。そして瞳に色が付いているのは光を遮るフィルターの役目があるからだ。
そして士郎の場合その目の色が紅い。つまり虹彩の色が透明なんだ。なぜなら虹彩が透明ということは網膜の色がそのまま透けているのだからな。
そしてそんな状態では光を見ることは出来ん
目の色は大火災の際に強い光を見たのが原因だろ。
しかしそれでもあそこまで紅くはない。だから体が魔法になったせいであんな色になったのだろう。」
「なるほどね。全くびっくり箱じゃないんだから。これ以上何かあってももう驚かないようにしたいは。」
「そうだな。」
翌日私たちは日本を発った。








あとがき
どうもNSZ THRです。
すいません魔術に関しては話の内容上無理でした。
それと士郎の体については「とある魔術の禁書目録(インデックス)」の「一方通行(アクセラレータ)」というキャラを真似させてもらいました。

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